
「英雄」として掘り起こされた日本人移民、後藤濶。
異なる人種や文化的背景を持つ人々が共存する社会を かれらはどのように生きてきたのか。
本書は、多文化社会ハワイや米国本土の日系人の歩みを辿りながら、 グローバル化が進む現代において重要になっている多文化共生の 問題について過去と現在を接合し、今日的な意味を探るものである。 リンチという暴力の過去が、いかに読み替えられてきたのか── ハワイに渡った後藤濶がリンチの犠牲となった事件(1889年)の 歴史・記憶・表象を、現地で「発掘」した様々な史料やインタビューも 用いて検証。そこには、太平洋の「楽園」というイメージの背後に潜む、 ハワイ王国の植民地化という激動の歴史、そして多文化社会に生きた 人々の衝突と融和の歴史が浮かび上がる。 先住民と各国からの移民の子孫たちにより形成された 多文化社会ハワイにおける日本人移民の記憶のダイナミズムと、 環太平洋の人々の移動と交流史の一端を紐解く。
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