『現代と保育 69号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.2
連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん> vol.2
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『野菜が(ちょっとでも)好きになる絵本!』
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「絵本で野菜嫌いをなおそう!」・・・・・・なんておこがましいことは言いません(笑)。でも、興味や親近感を持ってもらうには、絵本はかなり有効ではないでしょうか。
たとえば、赤ちゃんの場合。
野菜も、最初はなにかわからずに、とりあえず食べている状態ですよね。
「イヤ」なんて言い出す前にまずはこれ。『やさいだいすき』。身近な野菜におめめがついてあっという間に赤ちゃんのかわいいお友だちに。純粋に、おもしろい形やきれいな色に興味がわいてきます。
「やさいだいすき」
『やさいのおなか』は、野菜の断面図が影絵のように出てきて「これなーんだ」。なんだか見たことあるような・・・・・・おとなもけっこう真剣に考えちゃうこの絵本。子どもたちはその新鮮な形に夢中になります。わが家の息子が二歳のころ、実際に野菜が半分に切れるおもちゃ(包丁と野菜がセットで売られているもの)との合わせ技で、「野菜の断面」にかなり関心をもった時期がありました。料理の合間などに、そうやって覚えた野菜の「本物」を見つけると、思わず絵本のおもちゃと見比べて「おなじ、おなじ」。このときのうれしそうな顔がとてもいいのです。さらに「これ食べてみたい」なんて言葉が聞けたら大成功。
「やさいのおなか」
『やさい』は、みずみずしくおいしそうな野菜の絵が画面いっぱいに描かれ、それが収穫される様子なども描かれています。「土で育てて収穫する」。そんなプロセスを知ったり、実際に体験したりすると、普段食べている野菜への親近感が圧倒的に違ってくるのは、現場の保育の先生方のほうがよく実感されているでしょうね。「出所」がわかると安心する、というのはおとなも同じですものね。
「やさい」
主張がはっきりしてくる三歳くらいになるとちょっとやっかい。今まで平気で食べていたのに、突然「キライ!」とくる。そのかたくなまでの拒否、少しでも和らげてあげたいなぁ。
とってもかわいいキャラクターの『そらまめくんのベッド』そら豆のさやが、こんなにふかふかで気持ちよさそうなものだったとは、おとなも改めて見て感心してしまうこの絵本。わが息子も保育園で育ったそら豆を大事そうに持って帰り、ぎゅっと握ったまま絵本を読んでいましたよ。だからと言ってすんなりそら豆を食べるわけではないのですけどね。
「そらまめくんのベッド」
『サラダでげんき』は、角野栄子さんと長新太さんの愉快なナンセンス絵本。いろいろな動物が突然やって来てサラダづくりのポイントを教えてくれるのですが、これが意外なほどおいしそう!サラダを食べた病気のお母さんが、すっかり元気もりもりになる、という設定もいい。思わず「作ってみたい!」なんて子どもが言いだしたら、しめしめです。
「サラダでげんき」
最後に『ぜったいたべないからね』。これはもう、好き嫌いの激しい妹と、あの手この手でなんとか食べさせようとする妹思いの兄との攻防戦のお話です。おとなではなかなか考えつかない奇想天外な発想がすばらしい。返す妹もぜんぜん負けていない。
果たして妹は嫌いな野菜を口にするのか?・・・・・・なんてことはもしかしてそんなに重要ではなく、このやりとり、コミュニケーションのほうが大事なのかも・・・・・・と思わせてくれる粋な一冊ですよ。「嫌い」と言うのも子どもの一つの主張ですものね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。
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