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絵本『ちょっとまって、きつねさん!』を読んで感想文を書いてみよう!

毎年夏に開催される「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書が今年も発表されました。その中からピックアップするのは小学校低学年向けの絵本です。考えてみると、それまではただ楽しんでいただけの絵本です。いざ感想文を書くとなっても想像がつかない・・・なんて気持ちはよくわかりますよね。

そんな子ども達のお手伝いをすべく、今回は課題図書『ちょっとまって、きつねさん』を取り上げて、感想文を書くときのヒントをご提案します。
「なるほど、こういうポイントで絵本を読んでみると何だか書けそうな気がしてくる!?」
親子でそんな会話をしながら進められるよう、まとめてみました。参考にしてみてくださいね。

●絵本『ちょっとまって、きつねさん!』を読んで感想文を書いてみよう!                            


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ちょっとまって、きつねさん!
作・絵: カトリーン・シェーラー
訳: 関口裕昭
出版社: 光村教育図書


●まずは読んでみよう!

きつねとうさぎのぼうやが顔を付き合わせて、とても可愛らしい雰囲気の表紙。
でも、きつねの大きな口からはぺろりと舌がはみだしているようで・・・一体どんな会話をしているのかな?まずは思いっきり楽しみながら読んでみよう。

それからいざ、感想文にトライ!
「どんなお話だったのか、まとめて書いてみればいいのよ。」というお母さん、
「ちょっとまって!」
あらすじだけ書いた感想文・・・書く方も読む方もちょっとつまんなくないですか?例えうまい文章でなくとも、それぞれ自分の感じた事を言葉にしていく方が、読む方もぐっと興味が湧くと思いませんか。

そこで、以下に挙げるポイントを気にしながらもう一度読んでみる事をおすすめします。気がついたことはそのまま原稿用紙に書くのではなく、まずはノートに好きな様にどんどん書き出していってみよう。
※【例えば・・・】の部分の例文は、アドバイスされる方だけが読んだ方がいいかもしれませんね。


●ポイント1> どうしてこの本を選んだの?

まず、本題に入る前に
・どうしてこの本を選んだの?
・表紙の絵を見て、どう思った?
・タイトルからどんな内容を想像した?

こういう視点でお子様と会話をされると、いい書き出しが出てくるかもしれません。
(感想文は書き出しが肝心!)

【例えば・・・】
◎どうしてこの本を選んだのか?
 ・表紙の絵がすきだからこの絵本をえらびました。
 ・本の題がたのしいから。

◎表紙の絵を見て、どう思ったか?
 ・きつねは、とっても大きな口をしているな。
 ・ベロを出しているのはなんでだろう。
 ・きつねにくらべると、うさぎはとても小さいな。

◎タイトルからどんな内容を想像したか?
 ・なんで「ちょっと まって」なのかな?とふしぎに思った。
 ・きつねとうさぎは追いかけっこをしているのかなと思った。



●ポイント2> 登場人物になってみよう

・自分と重ねてみよう
・自分と比べてみよう

自分がもし登場人物だったらどう思う?お子様にそう投げかけ、もう1回読んでもらうことで、物語にぐっと親近感が沸きます。その時思った感想を素直に言葉にしてみてくださいね。

【例えば・・・】
◎自分を重ねてみよう
 ・もし私がうさぎだったら、きつねに食べられてしまうのではないかとこわくなりました。
 ・もしぼくがきつねだったら、うさぎに言われた通りに「おやすみなさい」なんて言うかな?

◎自分と比べてみよう
  ・うさぎぼうやは私と比べて―なぜなら・・・。


●ポイント3> 疑問に思ったことをあげてみよう

何度読んでもちょっとわからなかった事や、疑問に思った事も言葉にしてみよう。それも大事な感想です。

【例えば・・・】
 ・なんで「かならず おやすみなさい」を言うのかな?私も、お父さんとお母さんから、あいさつは大事だと言われています。でも、こわいきつねにもあいさつするなんて、へんだと思いました。
 ・パパうさぎが、きつねをぼうでたたこうとしたとき、うさぎのぼうやがそれをやめさせたのはどうしてかな?


●ポイント4> 読んでいて楽しいと思ったことをあげてみよう

どんな些細なことでも「面白い」「楽しい」と感じた部分をあげてみると、みんなちょっとずつ違うはず。そこがまた感想文の面白いところですよね。

【例えば・・・】
 ・きつねが、何度もうさぎを食べようとするのに食べられないところがおもしろかった。
 ・うさぎに塩をかけたり、お皿にうさぎがのっかっているところをそうぞうしているところがおもしろかった。
 ・きつねが、歌をうたってうさぎを眠らせようとしたら、自分がねちゃったところがおもしろかった。
 ・さいごで、うさぎのぼうやが、パパとママといっしょにねているところがかわいかった。ホッとした。


その他にも・・・
●お話しのテーマを考えてみよう
●お話しを読む前と後で、気持がどう変わったかを言葉にしてみよう。

などなど。

たくさん感想がたまってきたら、
さぁ、後はその材料をもとに書き出してみてくださいね。

子ども時代に「思ったことを言葉にする」楽しさを発見できるといいなぁ、と思いますよね。
では最後にこの絵本の「みどころ」をご紹介します。こちらは「感想文」の参考にはならないので、大人の方が読んでくださいね。


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まいごになったうさぎのぼうや。そこに忍びよるはらぺこきつね・・・。
こんなドキドキするシチューエーションで始まる物語なのですが、一つ面白いのはここが「きつねとうさぎがであうと
おやすみなさいをいう約束」の場所だってこと。一体どんなやりとりが始まるのでしょう?
 うさぎに近づいた腹ペコきつねは、勿論口をガバッとあけます。「あ!食べられる」と思うと、うさぎのぼうやは
「ちょっと、まって!」とさけびます。「しってるよね、ここはきつねとうさぎがおやすみなさいをいう ばしょだってことを?」このうさぎのぼうや、小さいクセになかなかどうして堂々たる態度なのです。慌てて「おやすみなさい!」を言うきつねですが・・・。
ここからのやりとりは読んでからのお楽しみとして。
結構緊迫したやりとりのはずなのに、うさぎぼうやがひょうひょうとしているからか、きつねが意外に素直だったりするからか、ほのぼのとした雰囲気をかもし出しちゃっている二人が見ていて何だか可笑しいのです。特にきつねがうさぎのぼうやを寝かしつけている姿なんて・・・「そんな事している場合?」なんて突っ込みたくなったりして。
うさぎぼうやの家族の関係も素敵。勇敢なぼうやの意思を尊重するパパうさぎ、ぼうやを包み込むママうさぎ。最後の場面も含めて、小さな子がうさぎぼうやを自分と置き換えて読んで行くととっても楽しめそうな内容ですね。
更に、くるくると変わる豊かな表情、毛並みの触感や体温まで伝わってきそうな迫力あるけど温かくてとても可愛らしい絵が物語を更に盛り上げてくれます。色合いや構成も日本の絵本とは一味違って新鮮に映りますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)


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