家族にまつわる7つのお話からなる短編集。 両親の離婚、再婚。うまくいかない関係性。不在、死。 そんな人間関係のピンチと向き合っている男の子が主人公です。
登場するのは、弱かったり、いなかったり(死んでしまったり)、子どもにとって完璧じゃない家族。 家族内で起きる出来事が生々しくリアルに描かれています。その現実に、敏感に反応する主人公たちは、怒ったり、あがいたり、さびしさや恥ずかしさを感じたり、諦めて受け入れたり。思春期のヒリヒリするような感情が、読者に突き刺さってきます。
この本を読んで感じることは、 家族の現実は、大人だけでなく子どもにも容赦なく降りかかってくるということ。 目を背けさせてあげたくても、誰もが見ないで済む子どもになれるわけじゃない。 自分でなくても周囲にきっとそういう友達がいるかもしれない。 家族って一番近くにいるけれど、お互い知らないこともあります。もしかしたら知らないことばかりかも。 それぞれが抱える問題や、めんどくさいこともいっぱい。だけど、分かってほしいし、やっぱりそばにいたいのです。
いつも心にくっついて離れない、非常にやっかいな「家族」という存在。 彼らの「いちばんききたいこと」は、時に胸にしまわれ、時に爆発して、大人に突きつけられます。 この本を読んで、子どもも大人も、それぞれの立場で、ハッとしたり、深く考えさせられると思います。 淡々と書かれる憂鬱な現実のなかにも、ウィットに富んだやりとりの面白さと、ユーモアがあるのが、作品の魅力。
登場する子どもたちは小学生ですが、味わって読むのは中学生以上におすすめ。大人にも読みごたえのある骨太な一冊です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
離婚した父親の家への、月にいちどの訪問。きびしくてたくましい弁護士のパパ。なんでも知ってるおじいちゃん。ママと思いえがく、理想のキッチンテーブル。亡くなったパパの幽霊(みたいなもの)。これから母親が結婚する相手との「採用面接」。生まれてはじめて会う祖父とのキャンプ――いちばん近くていちばん知らない、「家族」のこと。 ニューベリー賞受賞作家アヴィが、さまざまな「家族」をえがきだす7つの短編集。
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