パートナーなしの妊娠、出産を目指す夏子のまえに現れた、 精子提供で生まれ「父の顔」を知らない逢沢潤―― 生命の意味をめぐる真摯な問いを、切ない詩情と 泣き笑いに満ちた極上の筆致で描く、21世紀の世界文学! 世界十数ヵ国で翻訳決定!
生まれることに自己決定はない。だが産むことには自己決定がある。 この目も眩むような非対称を、どうやって埋めればよいのか? 母になる女たちは、この暗渠をどうやって越したのか? どうすれば、そんな無謀で勝手な選択ができるのか? 作者は、「産むこと」の自己決定とは何か? という、怖ろしい問い、だが、 これまでほとんどの産んだ者たちがスルーしてきた問いに、正面から立ち向かう。 ――上野千鶴子(「文藝」秋季号)
笑橋で今日も生きる巻子の、物語終盤での言葉に、誰もが泣くだろう。(中略) この作品は間違いなく傑作である。 ――岸政彦(「文學界」8月号)
この作品は、全方向からの意見に耳を傾けているような、 極めてフェアな作りになっている。 それも生殖医療を論じる難しさの中で、 子どもを持つ、というシンプルな願いをどう叶えるかと、模索した結果であろう。 川上未映子は、難しいテーマを、異様な密度で書き切った。 ――桐野夏生(「文學界」8月号)
これ以上ないほどシリアスな倫理問題を扱っているが、 大阪弁を交えた語りやセリフの爆発的な笑いの威力よ。 破壊と創造を同時になしとげる川上語も堪能されたし。 ――鴻巣友季子(「毎日新聞」7月28日書評)
この物語には、人が生まれて生きて、そしていなくなることの、 すべてがある。
|