粋な江戸っ子は、真っ白いものが大好きだった。 当然、白い飯は大好物。江戸も中期になると、白米は武士だけでなく町人にも食べられるようなった。 ここで起こった問題が「脚気」である。「江戸患い」ともいわれたこの病の解消のため、野菜作りが奨励され、参勤交代でやってくる侍も各地の野菜を持ち込んで栽培を始めた。 美味い野菜は江戸市中にも出回って特産品となり、やがてタネは江戸土産となる。 江戸は野菜の大集積場だったのだ。野菜の栽培は昭和の半ばまで続いたが、高度経済成長で宅地化が進み、商品としての野菜(収穫高が高く、揃いがいいなどの特徴のある一代品種)が主流になって、栽培されなくなった。 畑とともに、江戸から受け継がれてきた野菜も、作る人・食べる人の暮らしや歴史も忘れられていく──この現状に歯止めをかけるべく、立ち上がったのが著者だ。以後、野菜と文化を守るため、生産者や地域の人々、学校やメディア、自治体、NPOなどの力を得ながら、「伝統野菜の復活」と「地域の活性化」に奮闘し続けている。本書はその記録である。
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