朝鮮戦争の傷跡が色濃く残る1960年代初頭のソウル。 戦争で孤児となった主人公キム・ヒョンの心の友は、米軍のラジオ局から流れてくる最新のポップスだった。 どん底の生活を続けていたヒョンは偶然の積み重ねで、憧れの龍山(ヨンサン)米軍基地内のクラブステージにギタリストとして立つことに。
新世代の実力派作家が、K-POPのルーツである60年代音楽シーンの熱気と混沌を鮮やかに描く。 第五回秀林文学賞受賞作。
「おもしろすぎて目が離せなかった」「1962年にタイムスリップし、ステージの下で一緒に歓声を上げ、舞台裏で一緒に泣いてきた気分だ」。作家チャン・ガンミョンが激賞し、第5回「秀林文学賞」を受賞した本作は、韓国にロックとジャズが根づき始めた1960年代ソウルの龍山米軍基地内のクラブステージ「米八軍舞台」で活躍する若きミュージシャンたちの姿を描いた音楽青春小説である。 「タンタラ(河原者)」と蔑まれながらも、音楽への情熱を冷ますことなく、よりステータスの高いステージに立つことを夢見続けた若者たち。米軍基地を通じて欧米の音楽を受け入れることで発展した韓国の音楽史は、現在のK-POPのルーツでもあり、戦後日本のポピュラー音楽の発展と重なる点も多い。 朝鮮戦争が残した傷跡、軍事独裁政権下での人々の暮らし、芸能界に蔓延していた麻薬と暴力など、当時の社会や風俗を知る貴重な資料としても読み解くことができるだろう。
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