宝石や特別な石と出会い、取りつかれた主人公がはたしてどんな運命を辿るのか。その展開にハラハラさせられながらもどんどん惹きこまれてしまう魅惑のシリーズ。 さて、第2巻ではどんな宝石や石の物語を見せてくれるのでしょうか。
2巻に登場するのは、「ラピスラズリ」「琥珀」「トパーズ」「翡翠」「黒真珠」「ダイヤモンド」の6つの魔石です。どの物語も舞台となっている国や時代が異なり、ページをめくるごとに別世界が立ち現れ、1話を読み終えて次の話が始まる時のワクワク感がたまりません。それぞれに際立った面白さのある6話は、読む人によって、また読む時の気分によって、お気に入りが変わるかもしれませんね。
私が今回とくに印象に残ったお話は、1話目の「ラピスラズリ」のお話。こちらは、スペインに住むホセという絵描きの少年の物語です。ホセは、大貴族バルガス家のおかかえ絵師である画家アルフォンソに弟子入りするのですが、書きたいものが見つからず、毎日雑用ばかりを言いつけられる毎日。そんなある日、大貴族バルガスの娘の肖像画を依頼された師匠と共にバルガスの屋敷を訪れたホセは、ラピスラズリの珠を連ねた首飾りをして、ラピスラズリのような深い群青色の目をした少女エミリアと出会い、魅了されます。愛らしいのに痛々しいほど不幸な顔をしたエミリア。けれども師匠は、エミリアをバラのような笑顔で描くのです。それは、この肖像画が今でいうお見合い写真のようなものだったからなのですが、その絵を見たホセはある行動を起こします。その行動の奥に込められた想いとホセが描いた絵に大きく心が動かされました。ラピスラズリの宝石言葉は、「真実」や「健康」。その深くうつくしい青は、天空を思わせ、人を幸福する力があるとして、愛されてきたとのこと。物語の最後に、そんな風に語られる宝石の説明や「宝石言葉」が、物語の展開の答え合わせのようで、より物語に深みを与えてくれます。
「銭天堂」シリーズでおなじみのお話の名手、廣嶋玲子さんが紡ぐ不思議な千夜一夜の物語。その物語に佐竹美保さんの異国情緒溢れる大人っぽい挿画が見事にマッチして、まるで映画のワンシーンを見ているかのように物語が展開していきます。
魔石館の主人のことばより 「まこと、石は奥深い。いとしさも憎しみもかきたててくる。 ですが、石をだめにするのが人間ならば、本当の意味でかがやかせられるのも、また人間なのでございましょう。 願わくば、お客さまが石をかがやかせられる側の人間であっていただきたいものです」
「ラピスラズリ」の主人公は、石をかがやかせられる側の人間だったようですが、他の「琥珀」「トパーズ」「翡翠」「黒真珠」「ダイヤモンド」の物語では、主人公はどっちの側になったのでしょうか。ことに「ダイヤモンド」は美しさが際立つ分、争いごとの種となることも多かったようです。魔石と出会い、取りつかれた人間のたどる行く末はさまざま。ハッピーエンドだけでは終わらないというところも、このシリーズの大きな魅力なのでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
石はすばらしいものです。美しく、神秘的で、魅力と秘密にあふれています。 そんな石たちの語る6つの物語に、ゆっくりと耳をかたむけていってくださいませ。
魔石館に横たわる6つの石。 ★ラピスラズリ――心からえがきたいと思える絵を完成させた、画家の弟子ホセは……。 ★琥珀――妖精にとりつかれたいとこを助けるために、イーファは……。 ★トパーズ――老人の忠告を聞かずに、たくさんの宝石を手に入れたイシャンは……。 ★翡翠――富のために生贄をささげていた一族。秘密をしった青飛は……。 ★黒真珠――惚れた女性にふさわしい宝石を見つけたアンリだが……。 ★ダイヤモンド――人間の強い欲望によって、つねに争いのもととなってしまう宝石……。 ある時は、どきりとさせられ、ある時は、しんみりと感じさせてくれるなど、石は奥深いものです。
様々な国や時代を舞台にした、エキゾチックで不思議なお話が6話。充実の短篇集!
一巻がおもしろかったので、すぐに2巻も読みました。さらにおもしろい! 石の特性をつかんだ個性的なお話に魅了されます。特に琥珀が印象に残りました。お話にあった世界観の挿絵も素敵です。石は好きですが、ますます興味がわいてきます。石好きの大人にもおすすめの本だと思います。続きが楽しみです! (あんじゅじゅさん 50代・その他の方 )
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