だれかのために、自分を変える。 そんな勇気を、いったい誰のためになら、発揮することができるでしょう? 家族? 親友? それとも好きな人?
物語の主人公は、人前で話すことが苦手な、内気な少年オーエン。 彼の勇気は、ぼろぼろになった石の兵士像のために燃えあがる——
その朝、オーエンが学校に遅れたのは、彼の言うように、目覚まし時計が鳴らなかったせいではありません。 涙する母をなぐさめ、母のために朝食を作っていたから、というのが本当の理由。 彼の母は、家に帰らない夫を想って、悲しみの淵に沈んでいるのです。
さらに学校では、新しく着任した国語の先生の授業が、オーエンを悩ませます。 その先生は、オーエンが人前で話すことは苦手だというのもおかまいなしに、クラスの前で発言するよう、何度も当ててくるからです。 その上なんと、式典での詩の朗読をしないかなんて持ちかけてくるものだから、オーエンはうんざり!
そんなオーエンが、唯一、心をひらくことのできる存在がいました。 それは、公園に設置されている、石の兵士像。 オーエンは彼の前で夢を語り、悩みを打ちあけ、ときには兵士の境遇に想いをはせて、彼を思いやることさえします。 第一次世界大戦の戦死者を悼んで建てられたその兵士像とのあいだに、特別な絆を感じていたオーエン。 ところがある日、公園の再建計画の一環として、兵士像が撤去されることになってしまいます——
2020年チルドレンズ・ブック賞、ブルーピーター・ブック賞、最終候補作!
兵士像が撤去されることを知って、決定をくつがえすために尽力するオーエン。 そんな中、詩の朗読を持ちかけられた例の式典に、市長が来ることを知ります。 石の兵士に対する想いを直接市長に聞いてもらおうと考えたオーエンは、思いの丈を込めて、一編の詩を作ります。 大切なひとりのために詠む、そのたった一編の詩が起こす、思いもよらない変化とは——?
内気な少年を変えた石の兵士と、彼との間の絆に秘められた物語。少年オーエンの思いと行動に勇気をもらえる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
オーエンにとっての密かな楽しみは、公園の兵士相手に、だれにも話せない胸の内を語ること。兵士といっても生身の人間ではなく、第一次世界大戦の戦死者を悼んで庭園に設置された石の兵士だ。学校の行き帰り、石の兵士の隣に腰かけては、学校での出来事や将来の夢、悩みなどを打ち明けるオーエン。いわば石の兵士はオーエンの唯一の心の拠り所だった。そしてまた、石の兵士に、シリアで戦死した父を重ね見ていたのだ。 ところが、庭園の改修計画が持ち上がり、古い石の兵士は撤去されることになり……。
教室で発言することや友だちと積極的に関わることが苦手なオーエンが、石の兵士を守りたい一心で、勇気を出して立ち向かった――。 困難を乗り越える勇気、苦手なことに向き合う姿が心に響く感動作。
2020年チルドレンズ・ブック賞、ブルーピーター・ブック賞、最終候補作の翻訳版。
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