独創的な言葉でつづられた道元の教説を西洋哲学や宗教思想と比較して解釈し、教説・思想の相互理解とそれぞれの理解の深化を進めていく「比較解釈学的方法」から考察する。 〈目次〉 序 一 解釈とは何か 二 解釈の可能性 三 道元思想解釈への視点 四 道元思想の可能性 第一編 対話哲学としての道元思想 一 対話の構造 1 自・他、自他の語の用例/2 悟境の自他関係 二 自然との対話 1 道元の愛した自然/2 道元の自然観の特徴/3 道元の世界観 三 人間との対話 1 対立と共生(共存在)の表現/2 道元の人間観の特徴/3 主体の本来性―尽十方界真実人体―/4 対話の役割/5 仏法との対話―信受と自受用―/6 有と時の対話―『正法眼蔵』の時間論― 第二編 道元教説と比較思想―対話の可能性を求めて― 一 宗教的世界観と現代認識論―一元論的世界観の系譜― 1 人間一般に立ち現われる世界/2 仏祖の世界と衆生の世界/3 開かれた世界 二 宗教的清貧と現代的価値観―宗教行動としての「捨」の意味― 1 『宗教的経験の諸相』における「自己放棄」の効用/2 エックハルトの説教における「捨てること」の意味/3 『キリストにならいて』における「捨てること」の役割/4 聖フランチェスコの生き方―喜んで捨てるということ―/5 『聖書』における「捨」の教え/6 道元教説における「捨」の意味/7 現代人の意識内における「捨」のイメージ/8 「捨」の意味の宗教的特性 三 言語の創造性と道元の言語観 1 言葉の諸相と禅の言語観/2 『正法眼蔵』の言語観/3 仏祖の言葉の創造性とその条件/4 柳宗悦の言語観/5 「密語」について/6 禅の言語観の特徴と言語世界の可能性 四 幸福論と禅仏教の和平意識 1 バートランド・ラッセルの幸福論/2 幸福論における利他主義/3 内的和平と外的環境の相補性 五 東西宗教思想の対話―M・ブーバーの対話哲学― 1 対話的なもの―『対話』を中心にして―/2 永遠のなんじ―『我と汝』における絶対者―/3 没入棄却の道と神の道―ブーバー思想における他者の意味―/4 ブーバーの思想と禅仏教 第三編 道元教説と現代社会 一 現代的死生観との対話 1 死生観の諸相―理性的に死を考える―/2 現代的死生観の問題点 二 科学と宗教の対話 1 神秘主義の系譜/2 科学と宗教の棲み分け時代/3 科学時代と宗教 三 現代社会の諸問題と道元教説 1 環境問題/2 宗教と常識 初出一覧 あとがき 索引
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