ブラジルは日本から最も遠い国の一つですが、ビジネス、文化、スポーツ等を通じた両国間の交流は近年ますます盛んになっています。 一二〇年を超える両国関係の最大の特徴は人的交流にあります。長い歴史を持つ日本人のブラジル移住、一九九〇年代以降に増加した日系ブラジル人の来日によって、両国は互いに「多くの自国民とその子孫が住む国同士」の関係にあります。ブラジルは世界最大の日系人居住地であり、日本は世界第二位のブラジル人居住地です(二〇一二年ブラジル外務省統計)。日系ブラジル人を介して、ブラジルでは親日・知日の情が広がり、日本では多文化共生への関心が高まりました。ブラジルをよりよく知ることは、日本人と日本社会の国際化について考えるきっかけともなるでしょう。 ブラジルは資源大国として世界の経済成長を支える一方で、国内市場に世界の主要企業が進出するグローバル経済の最前線の一つでもあります。同時に、経済発展にともなうアマゾンの自然破壊は地球環境問題のホットスポットでもあります。多様な人種・民族が共存する多文化社会であり、トップアスリートや世界的アーティストを輩出し続けるタレントの宝庫でもあります。二〇一四年のサッカー・ワールドカップに続いて、今夏にはリオデジャネイロでオリンピックが開催される予定であり、日本人がブラジルを訪れる機会もますます増えると予想されます。 本書は、昨今のブラジルへの関心の高まりに応えるべく、ダイナミックに変化する日本・ブラジル関係、政治・外交、経済、産業・ビジネス、社会政策・社会運動、環境と開発、法制度に関する最新情報を提供することを目的として、サンパウロを拠点に活動するブラジル日本商工会議所が企画・編集したものです(本書で割愛した自然・地理、歴史、文化などに関する事項については、引き続き二〇〇五年刊『現代ブラジル事典』をご利用ください)。執筆には第一線の研究者、経験豊富な官民の実務家など総勢四九名があたりました。編者・執筆者一同、日本・ブラジル交流のさらなる深化のために本書を役立てていただければと願っています。(はまぐち・のぶあき 神戸大学経済経営研究所教授)
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