約50冊の書籍と700本の論考(『溢れる随想』全10巻)を残した著者アフマド・アミーンの論述は、膨大な山脈のようなものである。欧米の圧倒的な文明に直面して、社会、言語、文学、宗教、政治、文明など、あらゆる分野での改革を訴え続けた。本書はそのアンソロジーであるが、彼の人生論、宗教論、文明論の概要はすべてカバーされている。そう明言するのは、訳者の30年に渉る山脈探査の結果である。人は何のために生きるのか、それは善行を積むためと規定するのがイスラームであり、その先行きにある絶対善をアッラーと称する。宗教は幻想や戯言ではなく、人が直観の働きにより、存在の真実を極める方途であり体系であるとする。そこに見られる人間性が物質的な西欧文明を補完するとして、東洋の文明に大いに期待している。原理主義にばかり注目されがちな現代イスラームではあるが、もう一方ではこのように穏当な主義主張が脈々と流れているのである。
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