近現代の女性作家(物故者に限る)の手になる名随筆のアンソロジー、いよいよ後半分の刊行開始(第四回配本)。石井桃子は自伝「幼ものがたり」から祖父母、兄や姉、季節の遊びの思い出などを綴った部分を採録。また太宰治から好感を持たれた話、井伏鱒二に「ドリトル先生」の翻訳を依頼した話など、意外なエピソードもいくつか収録。文藝春秋、新潮社、岩波書店の編集者であり、「クマのプーさん」「ちいさいおうち」などの翻訳者でもある石井の文章をたどることは、日本出版史の一面を知ることでもある。高峰秀子も自伝「わたしの渡世日記」からの抜粋を中心に構成する。「蝶よ花よ」と持て囃されている子役のイメージとは全く異なり、持ち前の怜悧さで自分をも他人をも突き放したまなざしで見ている職業人(プロ)・高峰秀子。ほかに、梅原龍三郎の思い出、毛皮のコートを縫ってくれたお針子さんへの想いをめぐらせた文章なども採録。
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