1100万の見えないアメリカ人 不当な労働によって搾取され、虐げられ、精神を病む 不法移民の実情を克明に描き、 彼らの人間としての尊厳を取り戻す珠玉のノンフィクション。
全米図書賞Finalist
2016年のトランプ大統領の当選に刺激され、本書の執筆を決意した著者は、 自らも不法移民である立場を利用して、不法移民コミュニティへの旅を決行する。 スタテンアイランドで不当に搾取される日雇い労働者、 グラウンド・ゼロの清掃作業でさまざまな疾患に罹患し健康被害に苦しむ労働者、 医療の恩恵を被れず、代替医療やブードゥーといった民間宗教に走らざるをえないマイアミの不法移民、 フリントの水汚染公害で鉛中毒の子を産み苦しむ母親、 父親が国外退去となり、打ちのめされるクリーヴランドの家族、 移民の親を持つことに悩み苦しむニューヘイヴンの子どもたち、 そしてカーラ自身の物語をこれらの記録に織り交ぜながら、 彼女を数年間エクアドルに置き去りにせざるをえなかった両親の決断や彼らへの愛憎などを振り返る。
ただ克明に不法移民を取り巻く状況やそのメンタリティを描き、 個人的で深い共感を呼ぶ彼女の明晰な筆致は、 人種主義的・反移民的な思想を抱く人びとへの静かで強力な反論となっている。
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