ショートショートから作家としてのキャリアをスタートした太田忠司と 新世代ショートショート作家として人気を集める田丸雅智の二人が ゴッホ、ムンク、マグリットなどの名画をテーマに競作。 絵画の世界に引き込まれる一作です。
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まえがき 田丸雅智
何か一緒に、おもしろい連載をしてみませんか。 太田さんに誘っていただいたのは、2015年の春のことでした。同じ題材で二人が別々の作品を書く「競作」なんてどうでしょう。 そんなことを言っていただいたときには畏れ多くもあったのですが、とても嬉しく、新たな挑戦にワクワクしたのを覚えています。 その競作の題材を考える打ち合わせで、絵をお題にするのはどうだろうかと提案したのはぼくでした。もともと絵画が大好きで、実際に絵から作品を書いたこともあり、絵の持つ力を日頃から強く感じていたことから出た案だったのですが、それに太田さんも快く乗ってくださり企画が動きだしました。 ですがこの連載、一筋縄ではいきませんでした。 対峙しなければならないのは、題材となる絵。そして太田さんの存在を意識せずにはいられません。おまけに連載時は誌面に掲載されるまでお互いの作品を読むことができず、いっそう緊張感は高まりました。太田さんの作品が気になって、毎回飛びつくように誌面を開いたものでした。 そんな絵にまつわる競作作品をまとめたものが、この本です。 楽しみ方は、十人十色だと思います。 二人の作家の視点の違いや共通性を楽しむもよし、純粋に勝ち負けをつけていくもよし。あるいは我々の作品から刺激を受けて、同じ絵から自分の作品を書いてしまうもよし――。 この本を通して、何らかの形でみなさんの日常を少しでも彩ることができればいいなと思っています。
さあ、想像力という名の絵筆を手にしていただき。 あなたの最後の一筆で、ぜひこの競作本を完成へと導いてもらえればうれしいです。
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