古代から現代まで先人が紡いできた「平和志向」の糸を編み合わせ、 時に大衆を幻惑する「戦争の魅力」とも真正面から向き合いながら、 全人類が歩むべき道を提唱する、かつてない平和の書!
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――「序章」より(一部抜粋)
本書のテーマは英語でpacifismと呼ばれるものに近い。しかしこの語はふつう、平和主義とか反戦平和主義と訳される。もちろんそれらも対象に入るが、ひろく使うにはやや格式ばった語感がある。「平和っていいな」となにかの拍子にふと思う。そんな私たち一人一人の身の丈から始められるpacifismを目指したいものだ。「主義」ではどうも硬すぎる。
そこでとりあえず、「平和志向」としてみることにした。平和に向かおうとする傾向。主義も論も運動も、すべてここに含まれると考えていただきたい。その実例を、古代から最近までの歴史をたどりながら紹介し、つなぎ合わせる。
それらを踏まえ、私たち現代人が習得するべき“平和道”を提示するつもりだ。
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【内容】 ○戦争は利にならない――。平和志向の源流、墨子の「非攻」と「兼愛」 ○著述家ラモン・リュイが実践した、異なる文明の間での武力によらない交流 ○国際法の父フーゴー・グロティウスの生命尊重 ○哲学者イマニュエル・カントが夢見た永遠平和 ○戦争は魅力的なのか? 戦争を讃え続けたイタリアの詩人トンマーゾ・マリネッティ ○第二次世界大戦中に現役のドイツ軍将校エルンスト・ユンガーが書いた平和論 ○神話の時代から幕末まで。日本史のなかの平和志向と内村鑑三の現代性 ○原子爆弾はどのようにして作られたか。科学者オットー・ハーンの苦悩 ○二一世紀の平和道(今日から使える実践平和道三ヵ条)
【著者略歴】 前川仁之(まえかわ・さねゆき) ノンフィクション作家。1982年生まれ、大阪府出身。埼玉育ち。東京大学教養学部(理科一類)中退。人形劇団員、警備員等を経て、立教大学異文化コミュニケーション学科卒。2014年、スペインの音楽家アントニオ・ホセの故郷を訪ねてその生涯を辿った作品で開高健ノンフィクション賞(集英社)の最終候補となる。著書に、亡命者や難民の境遇を追った『逃亡の書 西へ東へ道つなぎ』(小学館)など
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