父さんを守りたいんだ。変わりゆくインドに生きる父と息子、感動の物語。
1947年、インド分離独立の前夜。おだやかな市場町に暮らす人々の生活は一変しようとしていた。病にむしばまれ、死を目前にした父。息子ビラルは、親友たちの助けを借りて、ある嘘をつくことを決意する。父さんのためなら何だってできる――ビラルの想いは、やがて周囲の大人たちを巻き込んでいく。苦しみながらつき続けた嘘がもたらしたものとは? ウォーターストーン児童図書賞最終候補作品。
――ビラル、話しなよ。なんでもかんでも自分ひとりで背負うのはダメだ。オレだって助けるけど、ほかの人だって助けてくれる。(親友サリーム)
1947年のインドで実際におこったインドとパキスタンの分離という、大動乱の時代にを背景にしてあります。
その背景を知らずに読むと内容を理解しにくいので、作者のあとがきを先に読むといいと思います。
主人公は13歳の少年ビラル。
母親は5年前に亡くなり、父親も余命わずかで家で寝ています。
ビラルは、父親の世話をしながら学校に通っています。
ビラルには3人の親友がいます。同じ宗教の子も違う子もいます。
インドとパキスタンに分離するために、今まで仲の良かった人たちが対立するようになり、町では暴動が起き以前のような平和な町ではなくなっています。
ビラルはその状況を父親には知られたくないと考え、3人の友だちに協力してもらってだれも家に入れないと決心します。
父親が新聞が読みたいといえば、自分で新聞を作ってしまいます。
宗教上、嘘をつくことは許されません。ビラルは父親が最期の時を迎えるときまで、悩み苦しみます。
現在でもインドとパキスタンの紛争は続いています。
大きな歴史の変動のなかで、この親子や周りの人々がどう暮らしていたのか知ることの出来る本です。
平和について考えさせられました。
この本の中で心に残った言葉があります。
ビラルの父はたくさんの本を持っていて、元気な頃は町の人々に話を聞かせていました。
「物語というのは、語り終わってあとも、聞き手の胸の内に長いこととどまっていないといけない。物語の世界が聞き手の目の前に広がらないとな」
「本を通じて、人は千もの異なる人生を生きて、百万もの冒険をすることができる」
これは、ストーリーテリングの講座などで言われる事と同じで嬉しくなりました。 (おるがんさん 40代・ママ )
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