言葉に縛られるということがある。呪文のように心が動かなくなったり、縛られたり。
田舎のお寺でサマーステイを決めた中三の夏芽は、母親が寺に託した子ども・雷太と生活を共にすることになる。
虐待や育児放棄を受けている子どもたちのことを考える時、そんな親でも一緒にいた方がいいのか?親といることは幸せなのか?読みながらいろいろ考えていた。「子どもは親を選ばない」という言葉が出てきた時、この言葉が重い足かせのようになってきた子どもはたくさんいるのだろうと思った。
自分の親だからといって愛せる親だけではないだろうし、無理解な親を憎む瞬間というのはあるように思う。
自然や寺の人たちとの関わりの中で夏芽の心がほどけていくのを感じた時、同じ作者の『よるの美容院』もまた傷ついた子どもの再生の物語だったと思った。
子どもたちの声にならない声を見守り、そっと先を照らしてやれる大人。今の時代、この物語に出てくる大人たちの関わり方が傷ついた子どもたちの再生の手がかりになる気がした。