著者は、「空からのぞいた桃太郎」の帯の「鬼だから殺してもいい?」「あなたはどう思いますか?」を読んで、桃太郎こそが悪者ではないかと衝撃を受ける。解説には福沢諭吉が「桃太郎は盗人だ」と非難したとも書かれている。「おにたのぼうし」や「わにのおじいさんのたからもの」「泣いた赤鬼」に出てくる鬼は、とてもいい鬼だ。もしかしたら、桃太郎に出てくる鬼も、本当は人間に悪さなんかしていなかったんじゃないかと思い、どうして桃太郎は盗人だと言われているのか、どうして鬼はいつも悪いと決めつけられているのか、調べることにした。
手始めに、「空からのぞいた桃太郎」で桃太郎を非難した4人の著書を読み、他にも同様のことが書かれている本がないか調べ、たくさんの桃太郎の本を読み比べ、それでも足りないので絵本読み比べリストを取り寄せ、その本も調べて、昔の桃太郎(古いものは江戸中期、享保年間)も読み、桃太郎の生まれ方と鬼ヶ島へ行った理由の変化を年表にし、鬼とは一体何なのか?を調べ……。大人の私が想像しても気の遠くなるような調査を、当時小学5年生だった著者は(写真から推察するにほとんど夏休み中に)仕上げているのです。
この本を手に取るに至った経緯は不明ですが(なんで図書館に予約したのか、受け取ったときには覚えていなかったし、今も思い出せない……(汗))、読み始めた時、明らかに子供の書いたイラストが貼り付けられていても、家族旅行っぽい姉妹の写真が載っていても、これが当時小学生だった女の子の著作だと気づかず、戸惑いました。それほど濃くて、太くて、完成度が高かったんです。
そして、巻末に実際にコンクールに提出した資料の写真を見て、それがこの本と全く同じ(本の方は活字化されていただけ)だったので、さらに驚かされました。
いやいや、世の中にはすごい子どもさんがいるもんだ。こりゃぁ、私ら大人も「ボーッとして生きてちゃいかんなぁ(古い?)」と思わされる一冊でしたよ。
こんな本を見せたら自信喪失されてしまいそうなので、私は自分の娘には読ませようとは思いませんが、調べ物好きなお子さんには奮起の本になるかも知れませんね。