「わたしは、けやきです。とうとう切られることになりました。
どなたか、わたしの命をもらって下さい。」
けやきの木の前で看板を持ったおばあさんが
一生懸命にお願いしていました。まるでおばあさん自身が
“わたしの命を助けて下さい”と町中の人に呼びかけているかのように
感じ、このおばあさんの切実な思いが胸が痛くなるほど
伝わるのです。
そのけやきの木は、おばあさんの家の庭にある200才の大木。
先に亡くなってしまったおじいさんや遠くに嫁いでしまった娘達。
それぞれとの思い出がたくさんつまっていました。
しかし、おばあさんも病気で体が弱くなってしまい
子どものもとへ行くことになってしまいました。
そのためにこのけやきの木が
切り倒されることになってしまったのですが・・・
この200年というなが〜い年月。けやきの木がどのようにして
過ごしてきたのか?全然想像が付かないのですが、
おばあさんの呼びかけで集まってきたたくさんの村人の様子から
いつでも村人を静かに見守り、勇気づけて来たことが
まるで私も一緒に経験してきたことのように感じ、不思議な
感覚がしました。
また、だんだんと小さくなっていく木は
「精一杯生きてきたよ。ありがとう」と、
おばあさんに話しかけてるようで、じ〜んとしました。
そして、新たな命を吹込まれたけやのきの木もどれも
新鮮で有り、心がこもった物ばかりで和やかな気持ちになります。
全体的に心に響くお話しに、素敵な思いでいっぱいの挿絵が
何ともいえない絵本でした。