米国の黒人教育家ブッカー・T・ワシントン(1856〜1915年)の少年期を描いた作品です。
南北戦争(1861〜1865年)後、奴隷解放宣言(1863年)が憲法修正による奴隷制の全面的撤廃を促し、1865年憲法修正案第13条として実現しました。
これにより、南部の州で奴隷の扱いを受けていた黒人は解放されました。
しかし、急に「自由」という名とともに社会に放り出された南部における黒人の生活は、困窮から抜け出すことで精一杯でした。
さらに、黒人に対する差別や偏見はその後も潜在的に残り現在に至っています。
本作品の主人公ブッカーの家も解放されたは良いのですが、「教育」などは念頭にも無かったことでしょう。
星がまだきらめいている早朝から食事もとらず岩塩の精製所で、塩の樽詰めの作業の労働力として9歳の少年も借り出されるという厳しい状況でした。
文字を教わりたい。字が読めるようになりたい。という思いで胸いっぱいのブッカーは、本にはきっとすばらしい世界が隠されているに違いないという思いを常に抱いていました。
ある日、同じ黒人なのに大きな声で新聞を読み上げている男の人を見かけ、“ブッカーの希望”となりました。
新聞を読み上げる“希望の人”に見とれているブッカーに、帰ることを促した父と兄に対して、
ふたり(父と兄)は ぼくが見ているものを 見ていない
という、ブッカーの言葉がとても厳しい響きに思えました。
当時の黒人の多くの人は食べることに奔走し、「教育」の大きな意味について立ち止まり考える余裕が無かったのだと思います。
いいえ、今の世の中にも通ずることだと思います。
その日、ブッカーはママに思いを告げると、青い表紙の小さな本(「ブルーバック・スペラ」)を渡されます。
そして、ブッカーはあの“希望の人”を捜し出し、・・・。
文字を読んで声に出しもらった時のブッカーの感激の様子が、文章からも絵からもしっかりと伝わってきて、心が震えました。
知的欲求のままに駆け出したブッカーの行動に、ここに本当の“実りある学び”があるのだと思いました。