言葉は多様だと感じたのは数少ない海外の地ではなく、青森県津軽地方に行った時のことだ。
温泉場で地元の老人と一緒になったのだが、彼らが何を話しているのかさっぱりわからなかった時だ。
日本という小さな島国にあってそうなのだから、広い世界となれば知らない言葉ばかりではないか。
この絵本の「イカン」とは、「いけない、ダメ」ということ。
関西弁にすれば「アカン」となる。
東北弁では「マイネ」らしいが、それはこの絵本で初めて知った。
「いかん、いかん」といつもお父さんに叱られてばかりの「イカン」はとうとう家を飛び出して、むかいに住む「アカン」はお母さんにいつも「アカン」と文句ばかり言われて、こちらも泣いて家を飛び出した。
二人の友達の「マイネ」も一緒に家を出て、世界をめぐる旅に出る。
途中でけんかをしている子どもがいれば「けんかはいかん あかん まいね」と仲裁にはいって、友達がどんどん増えていく。
友達が増えるのと同じように世界中の「いけない、ダメ」が増えていく。
「ナイン」「ノン」「ニェット」、あれやこれ。
言葉がそれぞれ違うけれど、伝わっていくのが不思議なくらい。
それは単に言葉だけではなく、表情であったり発音であったり、情報の手段がさまざまあるからだろう。
それは絵本でも同じかもしれない。
言葉だけではなく、絵も伝達の大切な要素。
この絵本では長谷川義史さんが絵を担当。
長谷川さんならではの伝える方法がこの絵本にもある。