『長くつ下のピッピ』シリーズや『やかまし村の子どもたち』のリンドグレーンさんの悲しみをおびたファンタジー作品でした。
このお話は昔々のスウェーデンでのことです。
悲しい身の上を背負って、村落共同体の中で“人としての生きる権利を無視された人々の小屋”で生活をしなければならなくなった少女マーリンのお話です。
あまりにも酷すぎる環境の中で、マリーンが出会った“美しい言葉”。
生活の中に潤いを見いだせなくなると、耳も研ぎ澄まされて行くのでしょうか。
わたしの菩提樹がしらべをかなで
私のナイチンゲールはうたう
この忘れられない言葉を自らの慰めとするだけでなく、マリーンは『菩提樹の木を小屋の皆の耕しているジャガイモ畑に』と考えます。
でも、今は菩提樹の木の種が手に入る季節ではありません。
そこで、、マリーンは…。
マリーンの切々たる思いにうたれました。
奇蹟は起こったのですが、その先にあの“美しい言葉”がみあたりません。
マリーンが、あの小屋に「美しさと楽しさ」をもたらすためにおこなった行いに、なんて清らかで無垢な献身であることかと感動しました。
社会的弱者が、「社会の中心」で暮らせる社会こそが福祉充実の国家の証かと思います。
現代社会においても、果たしてどれほど実現されているかと、首を傾げたくなる現実です。
これは、大人のための絵本でしょうね。