『何かを願うことなど無駄だ。みんなどうせもがさで死んでゆく。
みんな,死んでしまえばいい。』・・・どん底の少年 千広の心に震えました。
それでも,自分と同じように,
もがさで死んだ家族のそばにうずくまる幼い子どもに
銅銭を握らせずにいられない。
下働きの少女の顔を殴る上役に怒りを覚えて,小さな抵抗をせずににいられない。
従兄弟がすすめる大学寮での学問に心揺れずにいられない。
みんな死んでしまえばいいといいながら,
下働きの少女 宿奈に思いを寄せ
従兄弟の死に打ちのめされ
施薬院のひたむきな少年 安都に心開いていく。
千広と宿奈に訪れる小さな奇跡が大きな救いです。
どうしようもない世の中を,
どうしようもなく もがきながら生きることは,
いつの時代も在りつづける人の姿。
1300年の時を超えて,今もがき続けている人への
エールとなる物語だと思います。
飯野さんの刺し絵が臨場感たっぷりで,
登場人物の心のひだまで表されていてすばらしい!
個人的には,施薬院の坊主さんが人物描写ぴったりで好きです!!