ねこのリビーが、犬のダッチェスをお茶に呼びます。でもダッチェスは、そのお茶に出てくるパイが「ねずみのパイ」なんじゃないかと気が気じゃありません。そこで、こっそりパイを入れ替えることを思いつくのですが・・・。
「ピーターラビット」シリーズの中の一冊です。このシリーズは、人生を「きれいごと」にしてしまわないところが、私は好きです。例えば、このお話に出てくるねこのリビーも、犬のダッチェスも、それからリビーのいとこで雑貨屋を営むタビタも、どこかでちょっとだけ、誰かさんに対する本音を漏らしています。でも、本人の前ではそれをおくびにも出さない。そんな「大人のおつきあい」を提示した上で、リビーに対して真正面から当たらなかったダッチェスが、結果的には彼女にとっての「最悪の結末」に導かれる様子が、シニカルに、でもユーモラスに語られています。
おそらくダッチェスは「愚か」だったのでしょう。でもそのことを作者の言葉として明言はせず、ダッチェスの「気づき」として示したラストも、思わせぶりながら力があります。
上質な、風刺の利いたコメディのような読後感です。個人的には、集団の中で人と向かい合うことの面白みと気の重さの両方を理解出来る、6歳くらいからがお薦めです。そして、「カササギ先生」の胡散臭さが気に入ったら是非、「ピーターラビットのてがみのほん」も読んでみて下さい。