このところ毎日、赤羽末吉さんの作品をひたすら読み続けています。
その中で、『シャエの王女』というのがありました。
今昔物語を元にした作品らしいのですが、
これは隠れた名作といってもいいと思いました。
インドが天竺といった頃、シャエの国に一人の王女が産まれました。
お妃のマリ夫人は、とても美しい女性でしたから、王女もさぞかし美しい女の子であろうと期待したのでが、
王女の顔・姿を見て、王様もお妃様も絶望のどん底に落とされます。
王女の肌は毒蛇のようなうろこに覆われ、二目と見られない顔立ちだったのです。
王女は、人目をさけて乳母と女官に育てられます。
12になったある時に、王女は自分の醜い姿を始めて見ます。
女官が王女を諭した言葉が
>人は自分の力ではどうにもさけようのない災いに出あうこと、ふりかかろうとした運命を、どのように切りひらいてゆくかが、その人の価値をきめること
でした。
不幸・災難と言われる運命に出会った時に、そこからどう自分の人生を生きていくのか、
そこからが真価を問われることなのだと私も思います。
王女は何度か自分がこうして醜い姿に生まれてきたわけを問い、またそこから何を得て、何をしていくべきなのかを深く考えるのです。
実に深い話で、今までこれを書いた槇佐知子という作家のことは何も知らなかったのですが、
この作品の前に『春のわかれ』という作品があり、こちらの反響がよかったために、
この『シャエの王女』を書くことになったという経緯が『私の絵本ろん』の中に出てきました。
文章も読み聞かせしてみてとても滑らかで美しかったです。
赤羽さんの絵も、王女の醜い姿の描写はなく、ヴェールで包まれたのみの押さえた描写ですが、
王女の深い悲しみが伝わってきました。
これほどの名作であるにも関わらず、赤羽さんの本を読むまで、評判を聞いたことがありませんでした。
一人で読むなら高学年以上からだと思いますが、
これだけの名作が隠れているのですから、絵本は奥が深いですし、
隠れた名作を探したいという気持ちがますます起こってきました。
久しぶりにすごい作品に出会ったなあと、とても心が動いた作品でした。
偕成社、『源平絵巻物語』と赤羽さんの宮澤賢治の絵本と古典でいい本出してますね。