小さい頃、自分が大好きだった「いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう」「ちいさなおうち」「せいめいのれきし」のバージニア・リー・バートンの作品。
特に「せいめいのれきし」を、夢中になって貪り読んだ記憶が鮮明に残っています。
1949年の作品で、邦訳は何と2004年。
時を越えて蘇った作品です。
何と言っても、この作品はバートンのお父さんがこの作品が好きで、良く読み聞かせしてくれた思い出から生まれたというのが最高に素敵です。
最初に「この物語を、子どもたちとともに楽しんだ、父への感謝をこめて」とあり、そこに掲げられたソファで本を読む父を囲む子供達の肖像画が、実に印象的です。
物語は、勿論アンデルセンで誰しもが1度は読んだことのあるもの。
それに挿入された絵は、バートンならではのミュージカルを彷彿させるようなスケールのある広がりが特徴的です。
この絶妙な構成は、誰しもが彼女の絵と分かるものでしょう。
他の「はだかの王さま」と違うのは、バートンの描く王さまが、スリムでかつお馬鹿と思えないということ。
はだかの王さまのイメージって、とにかく恰幅が良くてお馬鹿さんというのが定着していると思うのですが、それを大きく変えたものです。
バートン流の描き方は、これはこれで、訴求したいことが明確なので良い感じだと思います。
「パレードははじまってしまったのだから、つづけねばなるまい」と王さまは考えるのですが、この潔さが新鮮です。
おそらく、この王さまのことですから、後段があれば、このことを反省して次に活かすことは間違いないでしょう。
一寸変わった「はだかの王さま」ですが、バートンの絵と相まって高い水準の絵本となっています。
アンデルセン童話を読むきっかけとしても、是非オススメします。