2020年の夏休みの課題図書になった本です。
対象が小学校低学年となっていて、絵を描いているのは長谷川義史さんですが、絵本というより童話の部類になります。
しかも、最初はタヌキのお父さんがタヌキにも勉強が必要だと、夜の教室でひそかに勉強するというようなファンタスティックな内容ですが、この作品の舞台が広島ということもあって、かなり重厚な作品になっていきます。
タヌキたちが学校で勉強している、そんなのどかな時代からそのうち日本は戦争の準備を始めていきます。
タヌキの子どもたちも夜の校庭で行進の練習をしたりします。
そして、戦争。ついには広島に原爆が落とされます。
このページから続く数ページの、長谷川さんの絵はなんともいえない悲しみでいっぱいです。
この絵を見るだけで、十分この本を手にする価値はあります。
広島の悲劇と戦後の復興は小学校の低学年ではまだ難しいかもしれません。
それを作者の山下明生さんは広島市民球場のそばのユニークなおでんやさんとそこに現れるタヌキの子どもたちとのエピソードで、わかりやすく、「平和」ということの尊さを表現しています。
「平和」とは、タヌキの子どもたちも楽しく勉強ができたり遊んだりできることなのかもしれません。