1960年のコールデコット賞受賞作品。
一番の驚きは、この作品が共著とは言え、マリー・ホール・エッソの作品だと言うこと。
日本でエッソと言えば、「もりのなか」でつとに有名ですが、コールデコット賞の受賞履歴は、驚くべきものがあります。
下記は全てコールデコット賞オナー賞
1945年 もりのなか
1952年 ねずみのウーくん
1956年 わたしとあそんで
1957年 ベニーさんと動物家族
1966年 あるあさ、ぼくは
そして、今回の「クリスマスまであと九日」で、コールデコット賞です。
物語の舞台は、メキシコ。
16世紀にスペインに征服される以前からインディオにより繁栄しており、その文化とスペインの文化とが混じりあい、独特の文化が生まれています。
今回は、1960年当時のクリスマスの風景を描いたものですが、およそ日本では想像だに出来ない光景が展開しています。
あまり馴染みのないメキシコの文化に触れることが出来たことは、この絵本の副産物であって、実に貴重な作品だと思います。
物語の主人公は、セシという女の子。
そのセシの視点を通して、メキシコのクリスマスの様子が描かれています。
キーになる言葉は、ポサダとピニャタ。
大人でも知らないこの2つの単語です。
まず、ポサダ。
全人口の殆どがカトリック教徒のメキシコで広く行われている行事で、クリスマス前の9日間、毎晩、違う家で行われ、子供達が楽しみにしているもの。セシは幼稚園に入ったので、初めて自分のポサダをしてもらえることになったという設定です。
次のピニャタ。
ポサダの日、その家の子どもが吊るすのがピニャタ。
ピニャタというのは、中に粘土のつぼの入っている紙の張子の人形のことで、それを割るのがイベントなのです。
全く想像の出来ない風習なのですが、それを詳細に描いています。
その様子を、セシという女の子の視点で描いているところが、一番の見所で、初めてのポサダを迎える少女の期待と不安、喜びや悲しみが忠実に表現されています。
今まで行くことを許されなかったマーケットに、ピニャタを買うため初めて行けることの喜びのシーンは、誰もが経験したワクワク感が一杯のもの。
誰しもが共感出切るものだと思います。
また、ピニャタが割られるシーンの切なさ。
これも、感情移入すること間違いなしのシーンなのですが、そこをとても上手く纏めているところは、エッツならではと言えるものでしょう。
クリスマスというイベントを終え、大きく成長を見せる姿に、大人も惹き込まれてしまうはず。
それを、エッソならではの色づかいの絵で、表現しています。
最初は、暗めの絵調と思えていたのですが、異国情緒溢れる印象を醸し出すには、この手法が適しているような気がしています。
流石に文章は長いので、読み聞かせでなく自らが読む作品です。
小学生中学年以上の、特に女の子にオススメしますが、大人が読んでも充分に楽しめる作品です。
コールデコット賞は伊達ではないことが分かる、秀作だと思います。