川に水が流れていないことに気がついた河童のメッケ。メッケはその原因を探す旅にでます。途中、出会った藤淵のソッカや鐘ヶ淵のヨイショとコラショも、その旅に加わります。そして、やっと川に水が流れていない原因をつきとめたとき、解決するためには、いけにえが必要だということを知るのです。
いけにえとして、ミッケは穴に飛び込みますが、これを「自己犠牲」ということばで括ってしまうとするならば、私はそれには抵抗を覚えざるを得ません。
「自己犠牲」は良い言葉のように聞こえますが、実はとても残酷で無責任な言葉だと思います。誰かを犠牲にしなければ成り立たない社会であってほしくありません。
だから、穴に飛び込んでしまったメッケを取り戻すために、残されたソッカ、ヨイショ、コラショは力を尽くします。メッケにみんながおんぶするのではなく、彼らもメッケと同じように責任をもって自分のできることをしたのです。
それをしなかった先祖たちは、いけにえになった河童を321年以上ものあいだ、地上をさまようカゲにしてしまいました。そして、いけにえにした河童のことも忘れ、そのカゲはこれからもずっとさまよい続けるしかないのです。
「自己犠牲」、聞こえは良いですが、これが善行として推奨される社会にはしたくありません。暮らしのなかに、いろいろ問題はあるかもしれませんが、それは「自己犠牲」でなく、小さな「親切」や「やさしさ」や「思いやり」の積み重ねで解決していくものだと思います。
小学中学年〜の子どもたちに向き。