風の子どもの成長と、まちつづけたひめねずみのせつない愛。
洗練された清らかな文章の中にせつせつと伝わってくるのは、愛することの哀しさでしょうか。
風の子のフーが買ったガラスのストーブに火をつけた時に現われたひめねずみ。
お互いさびしいもの同士の不思議な生活が始まります。
やかんを買い、なべを買い、道具を使ってひめねずみは温かい料理でフーをもてなしました。
そこに現われた北国の風の少女オーロラ。
フーがオーロラの言葉にひかれて北国に旅立ったのは風としての性でしょうか。
「しばらくのあいださようなら」
その一言が残されたひめねずみの心に沈みます。
旅立つものと残されたもの。
残されたものは待つだけです。
オーロラの残したコーヒーを沸かしたら、一人暮らしでいた多くのひめねずみが集まりました。
ひめねずみは一人ではなくなりました。
でも…。
何年も経って帰ってきた大人になったフー。
ひめねずみたちはいました。
そして、自分を待っているはずのひめねずみはひいおばあちゃんとして、すでにこの世にはいませんでした。
フーはすでに、ガラスストーブで心あたためた世界は自分の世界ではないことを感じます。
ひめねずみはきっとフーを待ち続けたんだよね。
ストーブの灯がとても暖かく感じられるだけに、旅立つものと待たされるものの切なさが鮮やかです。
私はいろいろなものとこの物語を重ねあわせてしまいますが、子どもたちにもこの切なさを受け入れるナイーブさを大切にしてほしいと思います。