きむらゆういちさんのこだわりでしょうか。
絵本では描ききれなかったガブとメイの出会いから、最後までを小説の形でまとめ上げました。
考えればオオカミのガブから見れば、おいしそうなエサでしかなかったヤギのメイ。
あらしの夜の偶然が、二人をこれほどまでに離れがたい関係に追い込んでいきます。
それは、友情という心の通い合いではあったけれど、許されない関係でした。
ガブからすれば野生の本能と対峙するとても険しい試練でした。
仲間たちに対しては決して認められない関係だったから、あくまで秘密の二人だけの世界でした。
それだからこそ美しいのでしょうか。
仲間を裏切り、逃避行を続け、ガブは仲間たちと闘うまでの極限の状況にまで追い込まれました。
絵本には、すきまがありました。
その隙間の中でいろいろなイメージを膨らませることができました。
この隙間を埋めていったのがこの小説版『あらしのよるに』です。
小説には、絵本の別巻でも保留にされていたエピローグが書き加えられています。
それは、読んでしまうと納得できるのですが、絵本からは読み取れなかった悲しい結末。
ガブとメイには、やはり結末が必要だったのですね。