山の麓のちいさな町に、いつも満員の歯医者さんがいました。
若くて腕がいいうえに、親切で、歯の痛い人がいればおやすみの
日でも診てくれます。先生は、お手紙を書くのが苦手なので、離
れて暮らすおかあさんに、なかなか約束の手紙が書けません。
女の子と書いた手紙がきっかけで、動物たちの診療した手紙を
送れるようになりました。なくなった父親にも手紙を書いたのです
が、ポストが最後の仕事として気がかりだったお父さんからの贈
リ物として、先生に美しい夕焼け空と懐かしいおとうさんとの散歩
や、草笛を届けてくれました。
”あきの 夕日に てる山 もみじ
こいも うすいも かずある なかに
まつを いろどる かえでや つたは
山の ふもとの すそもよう”
とても懐かしい唱歌に、いつまでも泣きながら歌いました。
とても思いやりがあって優しく、あたたいお話に泣けてきました
赤いポストは、動物たちに運ばれて先生の待合室に置いてある
のにも和やかになれました。