まず、この絵本は「稲生物怪録」に登場する少年、稲生平太郎(いのうへいたろう)と
妖怪の山本五郎左衛門(さんもとごろうざえもん)のお話を元にしています。
このお話を知らなくても
日本の妖怪の持つ涼しくなるような怖さや、
何事にも動じない平太郎の気丈さは宇野亜喜良さんの絵や、
「きもだめしだな。よし いいとも」という平太郎の言葉から十分に伝わってきます。
ただ、私は稲生物怪録を知りませんでしたので、
とくに平太郎について触れることもなく物語が進み、
どんどん妖怪が出てくることに最初はうまくついていけませんでした。
へいたろうの背景が見えづらいのは、
原作の「稲生物怪録」が稲生平太郎本人によって
体験談として書かれたものであることがひとつの理由かな、と思います。
読みづらいな、と思ったのですが、
それだけでは捨てがたい魅力を持っているので、
☆を4つ、つけさせていただきました。
個人的にお気に入りなのはへいたろうの着物です。
毎日ちがう袴なのですが、なんてモダンでセンスがいいんでしょう。
宇野亜喜良さんの絵本の中ではこの絵が一番好みです。
読む前にこの絵本は
ばけものに屈しないへいたろうの勇敢さ
を描いたものなのだと分かっていれば少しは違うかな、と思いました。