1987年刊行。日本に伝わる鬼の絵や彫刻、写真、物語などを通して、鬼という存在についてあれこれ研究してみる絵本。世界の鬼も紹介。
人は一度は鬼になる、という衝撃的な言葉は、子どもの鬼ごっこの鬼、という意味で本文には書かれていた。昔の地獄の絵で、亡者を襲う鬼と、亡者を守るお地蔵様の構図が、鬼ごっこをしている子どもたちの絵にそっくりだ。
地獄は、亡者にとっては恐ろしい場所だが、そこで働く鬼も休むことなく働かねばならない上、閻魔大王に監視されているという。まるでブラック企業。誰も幸せにならない構図。
今は鬼とされているが、もとは仏教伝来前の地元の神様だった、とか、その辺に住んでいるとか、天の国にもいるとか、その辺は鬼だらけ。人間も鬼になったり、鬼が鬼を退治したり、いろいろなケースがありすぎて、生粋の鬼というほうが珍しいように思えた。
幸せをもたらす鬼というのもあって、不思議。
案外、鬼というのは身近な存在なのだとわかった。
日本では昔から、人は鬼と一緒に暮らしてきたのだ。