遊び心タップリで、読み手をもてあそぶような絵本です。
そのくせブラックでシニカルで、超ナンセンスな絵本です。
王さまのひげが伸び続けて、世界を回って自分のところに戻ってくるというのです。
自分以外の者にひげを伸ばすことを禁じた王さまは、自分の所に伸びてきたひげの持ち主を、ひげごとちょん切ってしまえと命じます。
まさに、自業自得を絵に描いたような絵本です。
でも、さる国の慢心仕切った大統領の、無謀な野望を揶揄しているように感じたら、次第に腑に落ちてきました。
自分を美化したナルシズムは、回りまわって自分を消滅させるのです。
さる御方の「ひげ」はどこまで伸びるのでしょう。
自ら身動きが取れなくなって、自分の部下に命じるのは、諸悪の根源を断つこと。
こんなシナリオを妄想するほど、世界は緊迫してきているようでなりません。
もっとも、この絵本作家にそんな思いはないと思うので、それぞれにこの絵本から感じとっていけば良いのでしょう。