「おじいちゃん わすれないよ」
ベッテ・ウェステラ作、ハメルン・ファン・ストラーテン絵
オランダで出版。2001年度のブラスティヴァの世界絵本原画展「金のリンゴ賞」受賞。この賞は、歴史ある世界的な絵本賞であるらしい。でも、賞は絵に対してなのか、文章に対してなのかよくわからない。絵は、それほど新味もないオーソドックスなものなんではないかと思うけれど。
さっと読んで、隙がなくよく練られている作品だなぁと思った。
現実からおじいさんとの回想場面がいくつも繰り返されることにより、2人の楽しかった日々が十分わかるし、伏線としても、小道具としても、赤いハンカチが重要な使われ方をしている。これがラストでとても効果的に演出されている。
@現実 おじいちゃんの部屋のヨースト。悲しむヨーストに、ママは、おじいちゃんとの思い出の赤いハンカチを渡す。
A回想1 おじいちゃんとのカウボーイごっこ。ハンカチは、ヨーストのバンダナに。
B回想2 おじいちゃんとの海賊ごっこ。ハンカチは、海賊船の旗。
C回想3 おじいちゃんと家出。ハンカチは、お弁当の包みに。
D回想4 おじいちゃんと自転車の練習。ハンカチは、膝こぞうのけがの包帯。
E回想5 おじいちゃんとの約束。ハンカチは、結び目を作って、約束を忘れるのを防ぐため。
F現実 迎えの車が来て、墓地に向かうヨースト。ヨーストは、おじいちゃんの棺に土をかけるのを拒否する。
G回想6 おじいちゃんと砂浜で遊ぶ。すっぽうまっていたおじいちゃんは、アイスやが来ると起き上がってアイスを買ってくれる・・・。ハンカチは、おじいちゃんの頭を包む。
H現実 ママがヨーストにハンカチでできるいいアイディアを教えてくれる。
Iラスト ハンカチに結び目を作ったヨーストは、おじいちゃんのことを忘れないよと、誓う。
なんと見事な、よく考えられた構成。
やはり教科書に載ってもふさわしいような内容。
でも、実はあまりに整い過ぎて感動に乏しいような気もする。
ジョン・バーニンガムの「おじいちゃん」の換骨奪胎のような気もする。
でも、バーニンガムに感じられるような詩情が足りないような。
そんなこんなで、よくできた作品だけれど、印象が薄いのがちょっと残念。