シリーズとしてはとても素晴らしい作品だと思います。ただ、ローズが過去の世界に送り出されたあたりから、私も上の子も少々このお話のパターンに飽きてきました。
作者の物語の方向性は嫌いではないので、そろそろローズたちを自由にして、別の世界を描いてくれてもいいかな〜と、思います。
さて今回のお話は前回同様、ポックスの魔女の力で過去の世界に飛ばされたローズ、アン、サラたちの13世紀ヨーロッパでの『薬の魔女と』としての修業のお話です。
いよいよというか、とうとうペスト(黒死病)の病気魔女がメインの病気として登場します。
こうして病気の素(コンタギオン)や薬(ワクチン)の人間界へ登場していく背景を見ていると、その一つ一つの流れに歴史が見えてきて、とても面白いです。
今回のペストの話で一番「へぇ、そうだったのかぁ」と驚いたのは、
ペストが流行ったせいで、それまでのヨーロッパ各地の人口が激減し、そのために労力が少なくて済むぶどう栽培(ワイン)が発展しということでした!
このシリーズは、どれも病気の素(コンタギオン)がどのように人に感染していくか、その病気に対抗するために生まれたワクチンはどういうものか、
子どもたちでもわかりやすく噛み砕いて教えてくれています。
特に毎回物語の章と章の間に書いてある“コラム”では、物語としてではなく、現実世界での病気の流れや当時の世界の歴史的背景などをポイントを置いて解説してくれているので、とても勉強になるし面白いです。
その最後のコラムの中で『ハーメルンの笛吹男』のことも触れていました。『ハーメルン』はちょうどペストが流行した直後くらいにドイツで生まれた物語で、実際にハーメルンの街から子供たちが一斉にいなくなった事件があったことがもとで生まれた話だとか……。
小学校の高学年くらいから中・高校生、大人でも面白く読めます。
世界の各地ではやった色々な病原菌を扱うシリーズですので、歴史に興味のあるお子さんたちに特にお薦めします。