今年(2015年)は戦後70周年の節目に当たったからでしょうか、それとも息子が小学校高学年になったからでしょうか、私の父(息子にとって祖父)が息子へ買ってくれたのがこの本でした。
この『ビルマの竪琴』は、私の小学生時代ですら、必ず夏の推薦図書になっていましたし、今は渋い演技派俳優として知られる中井貴一さんが、若い頃、水島上等兵として出演した映画も制作され、「水島、いっしょに日本に帰ろう」という名文句がとても印象的な作品として心に残っているのですが、正直に告白すると、これまでしっかりと読んだことはありませんでした。
あらためて読んでみて、本当に陳腐な言葉ですが、心が揺さぶられました。戦場へ行き、毎日、殺すか殺されるかの日々を送っていたら、人間は残虐になるか無気力になるか、精神的に壊れないわけがありません。この部隊は、歌を歌うことで、その人間的精神を保っていたのでしょうね。あらためて高尚だなと思いました。
また、水島が帰国を断念した理由も、年をとったからでしょうか、自分には出来ない選択だけれども、理解が出来るようになったと思います。本当に戦争は悲劇しか生まないものだと悲しくなりました。
そして、私が今回、この本の中で一番印象に残った箇所は、人生で一度坊主になる国と兵士になる国との違い、そして、前者は決して金持ちになることはないかもしれないけれど精神的に満足した生活が送れる国、後者は発展を遂げるけれども絶えず他者と競う国であること、どちらが幸せなのかと作者が投げかけているところに、うっと唸り声をあげたい感情に駆られました。戦後数年で、このような冷静な目で国際社会や日本の姿をさらっと言いのけているところに、戦争への反省とその逆に今幸せであることの重さを知らされたような気がします。そして、思わず息子にどちらの人生がいいか聞いてしまいました。
高学年から対象となっていますが、ウチの息子には深いところまでは、しっかりと理解できていないようでした。むしろ、歴史を学んだ中学生や高校生に是非、読んでもらいたいなと思う本でした。でも、息子のように小学生の間に一度読んでみることにも、最初の一歩としてとても有意義だったと思います。本当に、特に今、これからの日本の姿に揺れている今、大切なことを教えてくれる名作だと思いました。再度、多くの人に読んでもらいたいです。