著者が、原爆投下後の孤児たちを支援していた教会シスターから聞き取った実話をもとに、フィクションという形で再構成した記録です。
ここで紡ぎ出されるのは、懸命に自力で生きようとした子どもたちの姿です。
もちろん、数多くの大人たちが、損得無しで援助してくれていたということも。
題名は、大人から、何か欲しいものは?と問われての、答え。
ストレートで、なんと切実な響きでしょうか。
しかも、子どもが、自身も困窮している中で、年下の子を世話しながらの言葉というのが、絶句です。
子どもたちの行動が次々と語られますが、その生きる力に圧倒されます。
さらには、ちゃんと、手を差し伸べてくれる大人も確かに存在したということのありがたさに、ただただ敬服です。
そして、視点は、今の子どもたちの現状にも向けられます。戦渦でもないのに、翻弄される子どもたち。
そう、手を差し伸べなければならない子どもたちが、今の時代にも存在しているということ。
大人がちゃんと自覚しないといけないことだと思います。