大好きな酒井駒子さんの絵。
でも、この絵本はあまり読みたくありませんでした。
子どもが生まれて、決して失いたくないものができたおかげで強くなったけれど、弱くもなりました。
大切な人を失ったら、どうしたらいいのだろう。
だから、私はシリアスな絵本はあまり近づけなかったのです。
それが、東日本大震災が起きて、いろいろな戸惑いを経て、少し気持ちが変わり、読んでみました。
くまが失ったことりを箱に入れて持ち歩く描写は、その美しさゆえに余計に読んでいてつらいものでした。
学生の時読んだ、キューブラ―・ロスの死ぬ瞬間(死を迎える人は否認と孤立→怒り→取り引き→抑鬱→受容という気持ちの流れがある、といった内容)を思い出したりもして。
くまが悲しみを受け入れられたのは、なぜだったのでしょう。
なにがあっても流れていく時間、晴れた空、同じ悲しみを受け入れたやまねこの優しさ、音楽、ことりとの輝いていた思い出が消えないことに気付いたから、でしょうか。
死が悲しいのは、それだけ生が素晴らしかった証拠なのですね。
重いテーマを湯本香樹美さんが優しく丁寧な物語を紡ぎだし、
酒井駒子さんが、生と死に通じるような、光と影を感じる黒っぽい絵で描きだしています。そして、少しずつ色づく印象的な赤。
大人のための絵本の名作だと思います。