グリム童話に耽溺した少女時代を過ごした大人たちにもたまらない作品だと思います。
お姫様の登場する物語に夢見、想像の世界でペチコートを何枚も重ねた上にドレスを纏う自分にうっとりしている年頃が、女の子にはあると思います。
グリム童話には、お姫様ものが多く私も楽しみました。
エロール・ル・カインの描くこの世界が、グリム童話の不思議なお話しと溶け込み、読者を絵本の中へ引き込む魅力があるのだと思います。
王である父親を騙し、12人のお姫様が毎夜降りていく地下の舞踏会場となっているお城の不思議。
親を侮り、靴をボロボロにするまで踊る事の魅力はやはり、魔力まがいの力を感じます。
銀の森・金の森・ダイヤモンドの森もまた若い娘を躊躇わせず前へ前へと歩を進めさせる呼び水のようです。
これを、描けるカインの想像画の世界はやはり、彼の確立したひとつの世界だと思います。
6文の淋しい懐から、1文めぐむ心優しい無欲な傷ついた貧しい兵士の登場で、解決の糸口が見つかったように、先を急ぎ読み進めることでしょう。
ラストの地下のお城の王子たちの手持ち無沙汰な様子も、笑いを誘う楽しい閉じ方でした。