小さい頃、家の納戸に古い美術全集があり、古い順に取り出して眺めるのが好きでした。
クレーの絵は何集目かの表紙になっていましたが、こんなに簡単に描けるような絵のどこが凄いんだろう、というのが正直な感想でした。
ただ、小さい人が小さい船に乗っている絵や、丸や四角が淡くきれいな色で描かれた絵は、可愛らしい感じがして好きでした。
さて、この絵本を見つけて、久しぶりにクレーの絵を見ましたが、可愛らしいなぁなんていうのではなく、なんだかジーンとしてしまいました。
うまく言えないのですが、絵がストレートに心に響いてくるのです。絵の放つ光が心に直接訴えかけてくるのです。
谷川俊太郎さんが、いくつか詩を添えているのですが、私にとっては、全く必要なしでした。
この絵の前には、必要以上の文字は要りません。タイトルだけでもう十分なのです。
申し訳ないのですが、文字はほとんど読まずに、絵だけをじっと眺めて、至福のときを過ごしたのでした。