表紙の絵、ひみつきちの中から外をみる男の子の横顔が
なぜか気になってページを繰った。
何か言いたそうな、物思いにふけったそのシルエットが
傍らのトンボと対比されてますます静かな、虫の音や風音だけが聞こえる
ポツンと孤立した情景を思い起こさせたからだ。
タイトルの「ひみつきち」という、やんちゃな響きとも対照的だった。
モノクロの丁寧なペン画は、とても郷愁的だ。
アンドルーの発明するガラクタ作品も、実に細やかに書き込まれている。
繰り返しになるが、カッコいいだろうではなく、よくできてるね、だ。
アンドルーと、仲間だろうか9人それぞれが自然と同じ場所に集まって、
それぞれの「ひみつきち」を創造してゆく時も、小鳥やらウサギ、
小舟やら母のドレス、どこか優しさを伴った基地に仕上がっていく。
解放されたくて、自分の居場所を探して、家出をして、夢をカタチに
冒険ハラハラ怪しさドキドキ、そういう在り来りのストーリーを
「ひみつきち」に想像して読み進めていた私である。
読み終えてから、作者ドリス・バーン氏が母であることを知った。
あぁ、現れているのは、母性なんだろうか・・・
表紙の男の子の横顔の意味は、なんだろう。
作者、訳者、岩波書店に 感謝。