東日本大震災と遠野物語がミックスされた心の深い場所を癒す物語。
というと俗っぽいのだが、実際東北在住の作者が、きっと大好きな土地に住まう人々に心痛めて語った物語ということがひしひしと伝わってくる。
どうしようもなくつらく、けれど逃げられない現実を前にした時、人々は物語りしてきた。それは古代より続いてきたこと。
中でも遠野物語という歴史ある物語を使い、まるでファンタジーセラピーとでもいう時間をくれる一冊である。
特徴は、外側からの視点ではなく、内側から震災を書いていること。完全内側の人が書いていて、無駄なかわいそう感や頑張れ感、絆!なんてものがなく自然に読める。
ただ文章がいつもの柏葉さんらしくない。
新聞連載だと字数や展開などのくくりがあるからか、どうも散逸的で、物語に組み込まれていて気づかなかったよ的伏線回収の感動が薄かった。
結局おばあさんは何者だったのだろう。エピローグがもう少し欲しかったな。
人に非ざるものも東北を心配してくれていたんだね。ほっこり。
ここで調べたからか、2016年年明け早々「遠野物語」を編著出版されている。合わせて読みたい。