評価が高いので、興味を持って読ませていただきましたが、私自身はこのお話に、とても違和感を覚えました。
昔話の研究者であるマックス・リューティーによると、昔話の登場人物は、心や肉体を持たない抽象的な存在です。基本的に昔話においては感情や感覚は語られませんが、この絵本では、桃太郎も私たちと同じように、人間としての感情である「喜び」や「不安」「恐れ」などの感情を抱いたということが物語を通して語られています。(そこが面白いのでしょうが)
もちろん、この絵本には「昔話」と書かれていません。「桃太郎」のストーリーを使った新しい視点の童話です。だからあれこれ言うことはないのですが、でも、「これは昔話とは違う」ということを、子どもにこの絵本を手渡す人には、認識しておいてもらいたいなと思いました。
童話だと思っても、私にとっては、桃太郎は川上から流れてきた桃の中から生まれた「異界の人」であり「超人」なので、彼がドキドキしたり、恐いと思ったりすることはやっぱり、「なんか違うなぁ」と思ってしまいました。