小学五年生の瞳が、母親の最期をみとるお話です。
父と母と瞳の心模様がとても繊細に描かれています。
まだ10歳の瞳にとって自分の母が死んでいくのを見送ることはとても切ないことでしょう。
母親にいろいろなことを語って元気づける姿は痛々しくもあります。
絵本は、季節が変わり父と二人で母親の死を乗り越えていくところで終わります。
これを「街のいのち」と表現して人の人生模様をくるみこんだ内容は素晴らしいと思います。
子どもにとって受け取るのには少し重い描かれ方かもしれませんが、描かれている絵と一緒に受け止められればと思います。
一種独特の絵で、この物語の深みを描いている横松桃子さん。
気になって調べたら、立松和平さんの長女で山中桃子の名前でも活動しているイラストレーター、絵本画家とありました。
父と娘であるから、ここまで心象風景を抽象化して文章とぶつかり合うような絵が描けるのだと納得しました。
余談ですが、立松和平さんの家系は、奥さんが小山内薫の孫、山中桃子さんのご主人は俳優山中聡。芸術家、文筆家、陸軍大将と素晴らしい家系だと、立松さん没後にして知りました。