初めて出会ったのは小学生のころ、
ごんぎつねが銃で撃たれて死んでしまうことに、
ただ「かわいそう」としか感想を持ちませんでした。
大人になって再会したときに、子供の本なのに
悲しく切ない終わり方をすることに
改めて衝撃を受けたのを覚えています。
でも、社会に出てさまざまな経験を重ねた今、
この「ごんぎつね」には、大切なメッセージが
込められているように思い、大好きな一冊になりました。
ごんぎつねが、いたずらのつぐないに栗を届けて、
感謝の言葉が自分ではなく神様に向けられ、
「つまらない」と思うあたり、なんと人間くさいんでしょう。
それでも、ごんは翌日も栗を届けるのです。
人が生きていく中で、
知らずに他人を傷つけてしまうこと、あるよね
善意が報われないこと、あるよね
誤解から相手との関係が上手くいかないこと、あるよね
でも、くさったり、冷めたり、諦めたりしないでいこうよ、
人は人と交わって生きてこうよ、
「ごんぎつね」を読むと、こんな風に感じます。
同郷の黒井健さんの柔らかな絵が、
ストーリーにとてもマッチして素晴らしいです。