上野を出発した夜行列車が金沢へ着くまでの間の様子を描いた絵本。全編絵のみで文章はありませんが、細かく描かれた旅客たちの様子に、さまざまな物語を想像することができます。
留袖を着て、大きな風呂敷包みを持った一団は結婚式の帰りだろうか、ホームで抱き合う男女は遠距離恋愛中なのだろうか…などなど。
この本が出たころにはもう生まれてしっかり子供だった自分には、何だかなつかしい世界。自分が子供だったころの日本人は、こんなふうに旅をしていたんだなとしみじみしてしまいます。
小さな子供がいるので、子供を連れて旅をしている人たちにばかり目がいってしまうのですが、寝台でもリクライニングする座席でもない、普通の4人がけの席で赤ちゃんのおむつを替えている場面が特に印象的です。赤ちゃん連れで夜行列車、しかもその席…ってものすごく大変だと思うのですが、すぐ近くに双子と思しき幼児を連れた家族もいるし、やはり昔は普通のことだったんでしょうか。
などなど、絵を眺めているだけで、いろんなことを考えて楽しめる絵本です。背表紙の対象年齢のところに「4才〜おとなまで」と書いてあるのも納得できます。この「おとなまで」というのも粋ですよね。