絵本の表紙に「あけるな」と書いてあって私は躊躇しました。
扉を開かなければ、中が読めないじゃないですか。
「あけるったら」、「あけるとたいへん」、「あけてはいけない」、「あけるなっていっているのに」と、誘っているような拒絶は何でしょう。
大人は、巧妙な手口で取り返しのつかない、落し穴に落ち込むのでしょう。
「あけるな」って言われたら開けたくなるのです。
しつこく「あけるな」って言われたら、意地になるのです。
このマインドコントロール、絵本で使うのはずるいなぁ。
でも、扉を開けたとたんに引き返したくなりました。
想定外の展開でした。
後は怖いもの見たさ。
心の扉だったとしたら、ずいぶんと寂しい情景からはじまります。
この荒涼館はでしょうな。
座っている男の背中にもやっぱり扉があって、とんでもない場違いの世界に迷いこんだ気になりました。
でも最後のシーンは何しょう。
安野さんと谷川さんのトリックと、その出口に気がぬけてしまいました。
人の心を弄んではいけませんよ。
心理的に考えると、とても深刻な精神状態に思える絵本ですが、おふざけでしょうか。
安野光雅さんが手がけているだけに、難しい問題です。